2020/08/19
アウトドアでも自転車でも、耐久性の高い素材のバッグは、壊れにくく長持ちするため安心して使えます。
しかし、その耐久性の高さが仇となり、服がダメージを受けるケースがあるのです。
そこで、素材の特性を理解し、最大限活用して頂けるように素材について書いてみます。
服を着ているうちに毛玉ができたり、毛羽立ったり、削れて薄くなったり……と、皆様も経験していると思います。
これが……
【セーター生地表面 ダメージの少ない箇所】
こうなったりしますよね。
【セーター生地表面 毛玉、毛羽立ちあり】
結論から言ってしまうと、素材同士の摩擦が原因です。
しかし、一口に摩擦と言っても、生地の構造や素材による相性の問題が大きくかかわってくるのです。
バッグでよく利用され摩擦の問題になりやすいのが、耐久性を高めるため摩擦や引裂きに強い糸を使ったコーデュラ(R)などのナイロン生地。
※コーデュラ(R)はインビスタ社の商標です。
【エアロールパックで使用している、厚手のナイロン生地】
分厚いナイロン生地は軍隊やアウトドアでよく使われ、固い岩の上に置いたり、多少地面の上で引きずったりしたくらいでは問題ありません。
また、リンプロジェクトでもよく利用している、ターポリンメッシュ素材は、通気性の高い薄いメッシュで、優れた強度を誇ります。
【ショルダーと背中にターポリンメッシュを使用】
【ターポリンメッシュ 拡大】
そのおかげでハードに扱っても壊れにくく、信頼性のあるバッグを作ることができます。
しかし、その強度ゆえに、これら頑丈な素材を別の素材と擦り合わせると、生地表面の凹凸同士が引っ掛かり、強度の弱い素材を削ったり、糸を構成する繊維が引き出され、毛玉ができたりする原因になるのです。
一般的に、綿やウールなどの天然繊維は、アクリルやポリエステル、ナイロンよりも引裂きや摩擦に弱いため、削れて薄くなったり、生地表面の凹凸が無くなることで光沢(テカリ)が出たりします。
また、化学繊維の場合は生地の構造に依存することが多いです。
保温性を高めるため、セーターやツイード生地などは、糸を作るときの撚りのテンションを低くしています。すると摩擦により、糸から一本一本の細い繊維が引き出されて絡まり毛玉になります。
【糸を構成する繊維が引き出され、毛羽立っている状態】
更に、「綿xアクリル」や、「綿xポリエステル」など天然繊維と化学繊維を組み合わせたものでも、柔らかめの風合いの生地の場合は、アクリルやポリエステルの繊維が糸の中から引き出されて毛玉になりやすいです。
特にアクリル、ポリエステルなどは繊維そのものが長い分、引き出せば引き出すだけ絡まってしまいます。
綿やウールの場合は繊維が短め、強度も低めなので、ある程度引き出されると自然に繊維が切れたり抜けたりして、毛玉が落ちることが多いです。
では、ナイロンなど頑丈な素材のバッグを使うときはどうすればいいのか。
生地の構造や素材の組み合わせの相性によって、はっきり言えないのが正直なところですが、自分が気を付けていることはこんな感じです。
1)服は糸が強く撚られている固めの生地を選ぶ
繊維を強く撚り合わせて固い糸を作り、高い密度で織った素材の場合は、固い素材をこすり合わせても繊維が引き出されにくいため、毛玉になりにくいです。
【高密度タイプライター生地】
表面がパリッとしてハリがある素材や、表面が滑らかで引っ掛かりのない素材は、固い素材を当てても滑ってしまい、ダメージが少ないでしょう。
例えば、表面に光沢がある(=ツルツルしている)ポリエステルやナイロン生地などが当てはまります。
【高密度タフタ生地】
2)バッグのずれを防ぐ
バックパックやショルダーバッグなどのストラップをしっかり締め、体に密着させることでバッグを固定します。
特にショルダーバッグはストラップを締めないと、背中側からお腹側にバッグが滑り落ちてくることがありますよね。この時に摩擦が発生し、服を傷めます。
しっかり締める事で、バッグが動いて発生するスレ=摩擦を最小限に抑えることができます。
個人的にもエアロールパック(荷物含む 重量6㎏程度)を毎日使い、往復2時間の自転車通勤をしています。
自分で1年以上使ってみて生地のダメージが少なかったものとして例を挙げると……
全リンプロジェクトアイテムを長期間使っているわけではなく、また、長期間使っていても廃盤商品などもあるので、これ以外でも良い物、悪い物もあります。
また背負い方、自転車のポジションなどでも変わってくると思いますので、参考程度にお考え下さい。
元バイシクルメッセンジャーとして毎日100㎞以上走っていたスタッフに話を聞いても、頑丈なメッセンジャーバッグを背負って走り、頻繁に荷物の出し入れを行うと、服はすぐダメになってしまうと言っていました。
【2009年 メッセンジャー世界選手権より】
そういえば、モッズコートがファッションシーンに登場するきっかけは、高級に仕立てたスーツを汚さないために、安く払い下げたフィッシュテールパーカーを上から羽織った事だ、というエピソードもありました。
また、自転車によく乗る方は、チノパンやジーパンにすぐ穴が開いてしまうことがあります。
これも今回の話と同様で、サドル表面のステッチ(縫い糸)は頑丈なポリエステル製のものが多く、摩擦により強度の低い綿を削っていくことが原因です。
現在、様々な素材が様々な用途のために使い分けられています。
素材同士の相性を見極めることで、お気に入りのアイテムを長く使えればよいですね。
書き忘れていましたが、面ファスナー(マジックテープ、ベルクロなど。どちらも商標名)も同様に服を傷めます。
セーターやカーディガンの表面に張り付いて、繊維が引き出されてしまった経験ありますよね。
それもそのはず、表面を拡大してみると……
面ファスナーの表面が硬い方(オス側、フック側)を拡大すると、文字通りフック状の突起が、一面びっしりと生えています。
このフックがセーターに引っ掛かって毛玉ができて……
片手で開閉が可能な便利さもありますが、面ファスナーにもご注意くださいね!