2022/02/03
「ディート」配合の虫除け剤を衣服に対して使用した場合、変色、劣化の恐れがあります。
特にポリエステル、ポリウレタン等の合成繊維を痛める可能性があります。
衣類にかからないよう、手に付けて塗り広げるなど必要な箇所のみにご利用ください。
体や衣類に対して虫除け剤をご利用いただく際は、使用上の注意を読んで正しくご利用ください。
さて、事の発端は【No.8038 アームクーラー】をご利用のユーザー様から、「週1、2回使っていたらこうなった」とフィードバックを頂きました。
円形に生地が薄くなっています。
調査したところ、冒頭で書いた虫除け剤に含まれる有効成分【ディート】がストッキング等で使われているポリウレタン等の合成繊維を変質させることが判明。
ポリウレタンはストレッチ繊維としてリンプロジェクトのアイテムをはじめ、サイクルジャージ、スポーツウェアだけでなく、動きやすさをうたったデニムなど幅広い洋服で使用されています。
また、腕時計のベルトやサンダルのソールなど様々なところで使われている素材でもあります。
この【アームクーラー】もナイロン93%、ポリウレタン7%でした。
リンプロジェクトでも追試験をしたところ、手元にあったディート10%配合の虫除けスプレーを同じ場所に10回吹き付け、30分ほど放置すると……
繊維の劣化により、一部が薄くなったことが分かります。
使用した虫よけスプレーの有効成分は、『1本(200ml)中ディート20g』つまり、10%です。
その他の注意には赤文字で次のように書かれていました。
『●変色の恐れがあるので、アクセサリーや腕時計などのプラスチック製品、ストッキング等のポリウレタン配合衣類にはかけないこと。●マニキュア、ジェルネイル等、装飾したネイルに直接かけないこと。』
ディートはアメリカ陸軍により1950年代に開発された虫除け剤で、日本でも非常に多くの虫除けスプレーの成分として50年以上使用されてきたそうです。
しかし、刺激が強く、6か月未満の子供には使えなかったり、24か月未満の子供に対しては1日1回の利用に限るなど制限もあります。
一方で、虫除け成分として2015年に日本で販売が始まった、【イカリジン】を使用したスプレーは子供にも利用でき、しかもポリウレタンや合成繊維を痛めないという説もありました。
そこで、別のメーカー製のイカリジン15%配合スプレーの仕様上の注意を確認したところ、
『ストッキング・合成繊維の衣類・皮革製品・毛皮・家具・塗装面・フローリング・プラスチック製品等にかからない様にする。』
『衣服に噴霧する場合には、繊維の種類によってはしみ、しわ、変質の原因になることがあるため、目立たない場所で影響がないことを確認してから使用する。合成繊維は変質しやすいので注意する。また、本剤を使用した衣類は、洗濯する。』
赤文字で合成繊維を変質させると書かれています。
イカリジンも合成繊維を劣化させるのか、一方でディートもイカリジンもどちらも溶剤としてエタノール(アルコール)を使用しているため、エタノールが劣化させるのか不明ですが、どちらにせよ、書いてある以上利用には注意が必要です。
夏の時期はどうしても虫刺され対策が必要ですが、一方でポリウレタンを使ったストレッチ繊維が動きやすい事も事実です。
どちらも快適さに必要なものですので、虫除け剤を衣類になるべく付着させないように手にスプレーして塗り広げたり、虫除けに効果のあるハッカ油を使うなど、それぞれの特性を理解して使うと夏を快適に過ごせると思います。
虫除け剤は使用上の注意を読んで正しくお使いください。